瓶詰めの映画地獄 〜エイガ必滅会者定離〜

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 「物語」を欠いた現代に贈る“信じること”についての物語… 『レディ・イン・ザ・ウォーター』

<<   作成日時 : 2006/10/11 02:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 4 / コメント 2

画像

たとえばネットにしてもケータイにしても、
信じられないような凄まじぃ進化を遂げて、
まるで望むものはすべて手に入るかとでも言うような、
そんな淡ぃ錯覚さえも抱きかねない時代だけど、
いろんなことが当然のように便利になったと思う反面、
人はどんどん“想像力”を欠いていっているような気がする。
ネットにしろ何にしろ、少し前までは考えられなかったようなものはすべて、
その根源はみんな、「こうだったらいいのに…」という果てしない“想像”で、
そしてその“想像”は言い換えれば、すべて夢という「物語」だったハズだ。
想像することができないから、人の痛みも理解することができないし、
人の痛みを想像することができないから、簡単に人も殺すし火をつける。
万能を手に入れることが大きな代償を伴うということまでは、
ボクたちは想像できなかったということか……。

そして、なにより想像の産物であるハズの映画にしてもことは同様で、
最近ますます想像力を欠いたツマラナイ映画が増え続けているような気がする。
想像を具体化させるために生み出されたハズのCGはしかし映画を安っぽくするばかりで、
みんなが同じところで同じように泣ける映画がいぃ映画とさえされる風潮は強まる一方だ。

そんな時代だからこそ、M.ナイト・シャマランの映画を観る価値はある。
『シックス・センス』、『アンブレイカブル』、『サイン』、そして 『ヴィレッジ』 と、
B級調でいかがわしくも昔懐かしぃ作り話の豊かな香りがいっぱぃの映画を紡ぎ続ける彼は、
そんな、「物語」が失われつつある哀しぃ現代に「物語」を想像することの歓びを教えてくれる、
まるで、耳を傾けているだけで安心感を与えてくれた口上のうまい紙芝居屋みたぃな監督だ。

なにやらアメリカでも日本でも不評を喰らっているらしいこのシャマラン最新作、
『レディ・イン・ザ・ウォーター』 も、もちろん極上の「物語」にして個人的には彼の最高傑作。
シャマランの紡ぐ映画の真髄は、何も安易なドンデン返しやオチにあるワケではない。
彼の映画は「物語」、それこそがすべてだ。なぜ、彼の映画をそんなに悪く言うのだろう……。

画像

 しがないアパートの管理人クリーブランド(ポール・ジアマッティー)は、
 トイレの修理や害虫の退治など、雑事に明け暮れる毎日を送っていた。そんなある日、
 何者かが夜毎アパートのプールで泳いでいることに気づいたクリーブランドは、
 ついにその正体を突き止めるが、それはストーリー(ブライス・ダラス・ハワード)と名乗る、
 謎めいた娘だった。彼女は、別世界に暮らす精霊で、
 自分を怪物から助けることが、現実世界の救済につながると語り始める……。

ツマラナイ日々を過ごす主人公のもとにある日、突然現れた顔色の悪い不思議な娘、
人間に“気づかせる”ために現れたというその娘の名がストーリー(物語)というところが、
ひいては、この映画のすべてを端的に物語っているということなんじゃないだろうか。
それはつまり、人間は「物語」によってこそ生きる知恵や教訓を得るという提示であり、
その「物語」とは映画や小説に限らず、日々の生活のあらゆる場所に潜んでいる。
この映画のスペクタクルの舞台はアパートの敷地内に限定されているけれど、
そうして限定されているからこそ、逆に「物語」は果てしなく広がりを見せるのだ。
思い返せばボクらが子供の頃だって、自分の家の周り、同じ町内、家と学校の間、
そんな大人になれば狭いとしか思えない範囲がしかし子供にとっては“世界”の広さで、
そしてボクらはその狭い“世界”でこそ「物語」を見つけそこから多くのものを得ていたハズだ。
シャマランは今再び、“見識”は広まったが“世界”は狭くなった大人たちを相手に、
限定された狭い範囲のなかで彼らに「物語」を見つけさせるべくドラマを展開させてゆく。

アパートの住人たちはそれぞれが勝手に生活し普段は隣の住人を顧みることもない。
自分の日々の糧のことだけを考えて、それさえ得ればあとは周りを振り返ることもない。
しかし誰かと隣り合わせたのは、偶然のようでいて本当は偶然じゃないのかもしれない。
そこにそれぞれが互いに意味を見出すことがやがては「物語」へとつながってゆく。
シンボリスト(記号論者)、ガーディアン(守護者)、ヒーラー(治癒者)、そしてギルド(職人)と、
まるで神話の如きキーワードが散りばめられながら今までバラバラだった住人たちが、
クリーブランドを中心にストーリーを守るため集結してゆく様子はまさしく冒険物語の王道。
そして住人たちがそれぞれの役割を得てゆくベースとなるのは彼らの“生活”という「物語」。
誰もが誰かのために生きているし誰もが誰かの“救世主”になれる。これはそのメタファーだ。
『アンブレイカブル』 がそうだったように、本作もまた“救世主”を求める混迷の現代の「物語」。

ストーリーが最初にクリーブランドのもとを訪れたのは、
彼が“辛い過去”を経験したことで、人の痛みを知っていたから……。
しかし彼は、その痛みを昇華させる方法までは知らなかった。
そこでストーリー(物語)と出逢った彼は、今初めて、痛みを勇気へと変える術を心得てゆく。
これは他者を“理解する”、ひいては“信じること”についての「物語」である。
アパートの住人たちが“気づいた”ように誰もがみな、互いが互いを見出すことができれば、
世の中に溢れる悲劇は少なくすることができると、シャマランは真剣に考えている。
そのためにこそ「物語」は機能するべきだと、彼は本気で信じている。
そしてその「物語」を紡ぎ続けることが神に遣わされた自分の使命だと考えている。
自分の紡ぐ「物語」が世界を救うと、彼は本気で信じている……。
いつになく役者としての露出が多いシャマラン本人の表情には、
『シックス・センス』 以降、何かと「物語」の稚拙さを酷評されることが多い彼の、
しかし作家としての悲愴な決意が滲んでいるように思えて仕方がなかった。
なにより彼は、自分の「物語」を信じている。そこが泣ける。
酷評されても酷評されても彼はまた、「物語」らしぃ「物語」を紡ぎ続けることだろう。
シャマランはもはや、“ハリウッドのガンジー”だ。
そんなシャマランの決意が熱くしかし温かく昇華してゆくクライマックスには、
ボクは独り、涙が溢れて溢れて止まらなかった……。

「物語」を欠いて病んだ現代の、処方箋を目指した伝統的な教訓と勇気に充ちたファンタジー。
『レディ・イン・ザ・ウォーター』 は、まさに 『ロード・オブ・ザ・リング』 に匹敵した大傑作である。

新宿ミラノ ほかにて公開中 ]

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
レディ・イン・ザ・ウォーター
 アメリカ  ファンタジー&ドラマ&ミステリー  監督:M・ナイト・シャマラン  出演:ポール・ジアマッティ      ブライス・ダラス・ハワード      フレディ・ロドリゲス      M・ナイト・シャマラン ...続きを見る
江戸っ子風情♪の蹴球二日制に映画道楽
2006/10/11 09:48
映画「レディ・イン・ザ・ウォーター」
原題:Lady in the Water ちょっぴり怖くて、ちょっぴりセクシーにして、ちょっぴりハートウォームな、不思議な物語のファンタジー、・・あの『サイドウェイ』 と『ヴィレッジ』 を思い出す・・ ...続きを見る
茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行...
2006/11/14 01:35
レディ・イン・ザ・ウォーター 07045
レディ・イン・ザ・ウォーター Lady in the Water 2006年   M.ナイト・シャマラン 監督ポール・ジアマッティ&nbsp; ブライス・ダラス・ハワード&nbsp; ボブ・バラバン&nbsp; ジェフリー・ライト&nbsp; サリター・チョウドリー&nbsp; シンディー・チュン フレディ.... ...続きを見る
猫姫じゃ
2007/03/12 17:58
レディ・イン・ザ・ウォーター
この映画、あちらでは物凄いブーイングを浴びたそうで。。。( ^ _ ^; でも観てみないとね。 DVDで鑑賞。 ...続きを見る
映画、言いたい放題!
2007/05/02 03:29

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは♪

本作を傑作と感じてくれる同志がいて心強いです!!
残念なことに世間の評価が思いのほか低いのが寂しいですよ。
でも「アンブレイカブル」だけは未だに馴染めません・・・r(^^;)
風情♪
2006/10/11 09:51
傑作も傑作、大傑作だと思います。
これこそが「物語」、想像することの素晴らしさ。
本作が不当な評価を受けるのは真に寂しぃことです・・・。
>「アンブレイカブル」だけは未だに馴染めません・・・
そうですか? 俺はこれも好きだけどなぁ〜。
栗本 東樹
2006/10/13 19:37