|
“9.11”の真相をめぐって、 今また本国でも“陰謀説”が再燃している様子で、 それは、“イラクは生物化学兵器を持っている”とある意味、ウソをついて、 イラクに仕掛けた戦争が結果的に今、酷い状況を生んでいるという、 ブッシュ政権に対する不信感がそうした論議の呼び水になっているんだと思うし、 事件以降、そうやって“対テロ”を大義名分に好き放題やらかしている、 アメリカの右傾化にブレーキをかける作用をなしているのかとも一方じゃ思うんだけど、 しかし、けっきょくそうした陰謀説が盛り上がる最大の要因のひとつは、 あえて不謹慎な言い方を許してもらえるとすれば「面白いから」にほかならず、 アメリカでも世界でも、一部の人にとって事件は早くも“過去”になりつつあるんだな、 という気がしないでもないし、『ユナイテッド93』 や 『ワールド・トレード・センター』 など、 近年、ネタ枯れ著しいハリウッドが早くも事件を題材に競作している現状なんか見ても、 そしてそれをやぃのやぃのとけっきょくは面白がって観ている自分のことを振り返っても、 その記憶は永劫消えないと思うし傷が癒えることもないとは思うんだけど、 事件はモノ凄ぃスピードで過去へと流れていっているような気が、ボクはする。 確かに、陰謀説はそれだけを見れば面白いし、事件の衝撃が強烈だっだけに、 それを扱った映画には倫理的問題云々以上にどうしたって猛烈な興味が湧く。 で、この、『セプテンバー・テープ』。 なんとなく意味深にも取れるタイトルに、 “ブッシュよ、何を隠している?”という扇情的な惹句から、 ボクはてっきり、陰謀説の証拠を掴んだと言わんばかりの、 いかがわしくも興味深いドキュメンタリーかと思っていたら、 なんのことはない(なんのことはないって凄ぃ内容だけど)、 これは事件から1年後のアフガニスタンを舞台にした、れっきとした“劇映画”だった。 アフガニスタンとパキスタンの国境付近で、 8本のビデオテープが見つかった。 それは、消息を断っていたアメリカ人ジャーナリスト、 ドン・ラーソン(ジョージ・カリル)の足跡を記録した映像だった。 “9.11”事件後、オサマ・ビン・ラディンの消息を追ってアフガニスタンに渡った彼は、 アフガン・北部同盟の要人や報奨金ハンター、武器商人と接触するが、 ビン・ラディンに関するさらなる情報を求め、危険地帯へと向かっていた……。 『ユナイテッド93』 や 『ワールド・トレード・センター』 ほど題材がダイレクトではないために、 そして、今や再びアフガニスタンが遠い彼方の危険な国という印象になっているがために、 イマイチ掴みどころがなくどこにも話題にさえ上がっていないように見える本作。 要するにコレは、事件に恨みを抱くひとりのジャーナリストとその撮影クルーが、 事件の首謀者に復讐しに行くというテーマを骨子にしたシナリオをもとに、 あとは現地で起こるハプニングを取り込んで臨場感満点のドキュ・ドラマに仕立てるという、 わかりやすく言えば、“9.11”版の“電波少年”。 もしくはこんなテープが見つかったという件から始まる点じゃ、 これは“9.11”版“ブレア・ウィッチ”と言うこともできるかもしれない。 とにかく、映画を観てる限りじゃどこがフィクションでどこがノンフィクションか全然わからなぃし、 それがうまく映画の吸引力になっているという見方もできれば、 そのせぃでたとえ事実であってもすべてがウソ臭く見えるという逆の見方もできて、 けっきょくそれは、映画を観た人によって大きく異なってくるように思うけど、 ボク個人としては、話の展開そのものがあまりに“映画”的すぎるのと、 起こるすべてが製作者の思惑どおりに進んでいるような気がして仕方がなかったのとで、 これまた不謹慎なモノの言い方になるのかもしれないが途中で映画自体に飽きてしまった。 要は、現地での危険な撮影にもとづくドラマとして最初から見せてくれればよかったものを、 ヘタにこれは事実とでも言うようなフロシキの広げ方をしたがために、 言ぃ方もヘタだけどノンフィクションがフィクションに喰われてしまっていたような気がするのだ。 言ぃ方を変えれば(変えても仕方なぃけど)仮に、 武器商人やビン・ラディンの首を狙うバウンティ・ハンターが本物だとしても(本物だろうけど)、 役者の演技もセリフもカメラ・アングルもすべてが芝居がかっていて、 そして銃撃戦がたとえ本物だとしてもそういう作り手の作為が邪魔をして、 まるでリアリティ満点のアクション映画を観ているような気にしかならないのだ。 ラストに出てくる、この映画のフィクション上の動機がさらにそれに拍車をかけてもいる。 もっと言えば、これはアフガニスタンで撮影されたことになっているけど(撮影したと思うけど)、 仮に、パキスタンで撮影し、それをアフガニスタンで撮影したと言っても、 おそらくアメリカ人にも日本人にもわかりはしないだろう。それが映画というものである。 けっきょく 『ユナイテッド93』 にも言えることで、 超が付くほど迫力のある臨場感にこだわるわりには事件や現実に気を遣いすぎて、 確かにこれは「アメリカにも問題がある」という視点をアフガンの声として取り入れているけど、 最終的に何が映画の目的なのかこちらに伝わり切らないまま終わっているということなのだ。 それならば何もヘタな言ぃ訳などせず、 “9.11”やアフガンをネタに面白い映画が撮りたいと胸を張ればいぃのにとボクは思うのだが。 ただ、確かに映し出されるすべてに臨場感が漲り、息を呑むことしばしば。 そのド迫力を堪能するだけでも本作には入場料金を払う価値は充分ある。 そういう意味じゃ、これは無軌道でヤマッ気旺盛な映像クリエイターたちによる、 アフガンを舞台にした“ジャッカス”として観るのが、いちばんのような気がする。 [ シアターN渋谷 にて公開中 ] |
| << 前記事(2006/10/08) | トップへ | 後記事(2006/10/10)>> |