瓶詰めの映画地獄 2009

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 心温まるロード・ムービー型ホームコメディ 『リトル・ミス・サンシャイン』

<<   作成日時 : 2006/12/31 18:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 13 / コメント 6

画像

現在、実家がある名古屋方面に帰る時は、
コスト削減により、新幹線ではなくて高速バスを使う。
かつては海外で三日三晩バスに乗り続けても体力保ったのに、
最近じゃ東京―名古屋間のたった5、6時間が体に堪えるようになってきた。

バスの中でひとしきり眠り、本も読み飽きて、窓からボンヤリ外を眺めていると、
この時期はとくに家族連れの車が何台も何台も脇を走り過ぎてゆく……。
疲れているのか全員が黙って前を向いているだけの家族もあれば、
後部座席で子供がテンション上がってハシャギまくっている家族もあり当然その風景は様々。
すれ違うだけ“家族の肖像”が垣間見え、眺めているだけでしばらくは飽きない。
子供の頃、こんな風景に憧れていたなぁ…と、少しセンチになったりもして―。

格差社会だなんだとメディアが率先して差別を煽り、先の見えない世の中だけど、
そんなクダラナイ言葉はけっきょく家族のカタチには何も関係がない(と思う)。
勝ち組を目指そうとたとえ負け組に括られようと“家族”なんて永久に不完全なままだ。
そんななか、今にもエンジンが止まって壊れそうな不完全にもほどがあるボロボロの一家が、
美少女コンテストで優勝することを夢見る娘のために家族総出で、それこそ、
家族を象徴するようなポンコツ・ワゴンに同乗して旅をするロード・ムービー型ホームコメディ、
それがこの、『リトル・ミス・サンシャイン』

決して名作でもなければ傑作というワケでもないけれど、
不完全な家族の不完全なままの魅力にほんの少しだけ胸が詰まり、
「いいんじゃないのこんなモンで」という決して卑屈じゃない開き直りが心地好い、
今年1年を締め括るには適度な温度の好篇と呼べる仕上がりの1本だった。

画像

 小太りの眼鏡っ子、オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、
 美少女コンテストで優勝すること。運良く地方予選で繰り上げ優勝した彼女は、
 独自の成功論に取り憑かれる父・リチャード(グレッグ・キニア)や母・シェリル(トニ・コレット)、
 そして自殺を図ったゲイの伯父・フランク(スティーヴ・カレル)らとともに、
 1台のミニバスで決勝大会の開催地を目指す小旅行に出るのだったが……。

浅はかな勝ち組志向に縛られる父親、ジャンキー崩れのじいさん、
思春期らしく家族を毛嫌いして“ニーチェ”を気どる息子に自殺未遂のゲイの伯父、
そんなバラバラの一家をなんとかまとめようと躍起になる母親にボクの姪っ子と同じぐらい、
いかにも「オシャレ魔女 ラブandベリー」にハマッてそうな健気な娘……。
こうして挙げるといかにも家族の不協和音をあざとく煽った映画に思えるけど、
しかし映画は過剰にそんなフーヴァー一家の不完全ぶりを強調することはなしに、
サッサと一家をワゴンに詰めて、コンテスト決定戦の開催地へと走らせる。

たとえば 『スケアクロウ』 や 『ハリーとトント』 を彷彿とさせるような、
往年のアメリカン・ニューシネマ調のロード・ムービー、そのアッサリ感がことのほか心地好く、
一旦停止するたびにいちいちクドクドやダラダラもしないから、
エピソードの数珠つなぎであるロード・ムービーの体がとても読みやすく読後感の好い、
短篇小説集のような肌触りになっていてまるで疲れないのがとにかくうれしい。
これがたとえばヴェンダース調のロード・ムービーだったらウザくてゲンナリしたことウケアイ?

この映画で描かれているのは、
勝ち組礼賛社会へのアジテートでもなければ“ボロは着てても心は錦”的貧乏擁護でもなく、
極めて現代的な家族の在り様を通して見る“なんでもアリ”の楽しさ、そして面白さ。
要は価値観の多様化を謳うワリに人目を気にしてイメージに縛られやすい、
現代人に対する自虐を含めたチョットした皮肉じゃないかと思うんだ。
そしてそれが小気味好く炸裂するクライマックスはベタだけれどやっぱり痛快で、
今年の“ジョンベネちゃん事件”犯人誤認逮捕に関する一連の騒動で、
世界中を呆れさせた厚顔無恥大国のアメリカにも、こうした、
まともな神経を持った人間がいることを教えてくれて(当然だけど)そんな部分でもホッとする。
まぁ少子化を逆手にとって子供をターゲットにしたビジネスが跋扈しすぎな感もある、
日本はアメリカのことを今に笑ってられなくなるような気もするけれど・・・?

しかしそんな心配はとりあえず置いて、
クセのある演技陣の顔ぶれとクセがあるようでない物語とのブレンドが、
ほどよく腹八分目の満足感を与えてくれて真に良心的な佳篇。
この時期、冬休みを狙ってオセチのように大味な映画も増えるなか、
大作映画にもオセチ料理にも食傷気味になりそうな人にはもってこいの小品だ。

シネクイント(渋谷)、シネ・リーブル池袋 にて公開中 ]

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(13件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
リトル・ミス・サンシャイン
黄色いフォルクスワーゲンワゴンがプヒ〜ッと壊れたクラクションを 鳴らしながら走る走る・・・ 目指すはカリフォルニア「リトル・ミス・サンシャイン」コンテスト会場。 ...続きを見る
龍眼日記 Longan Diary
2006/12/31 22:09
リトル・ミス・サンシャイン
今年の映画館で観る映画、第一作です。 ...続きを見る
日っ歩〜美味しいもの、映画、子育て......
2007/01/06 20:40
映画「リトル・ミス・サンシャイン」
原題:Little Miss Sunshine 夢と希望と、そして目一杯の不幸せと怒りを背負い込んでフォルクスワーゲンのミニバスが行く・・不運に見舞われ続ける彼らに、家族の幸せは訪れるのか ...続きを見る
茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行...
2007/01/09 01:21
負け犬ファミリーのロードムービー。~「リトル・ミス・サンシャイン」~
いや~、どこにでも病んでる家族はいるもんでしょうが 全員が全員ココまでスゴイとは。(笑) 成功論をまくし立て 勝たなきゃ意味がないと力説する父親 (でも、あてにしてた契約が取れずに収入が入ってこない) ヘロイン中毒で女好きのおじいちゃん (え~マジでそんな終わ.. ...続きを見る
ペパーミントの魔術師
2007/01/10 15:32
人生はミスコンと同じぐらい馬鹿げているのか〜「リトル・ミス・サンシャイン」の衝撃
 いやー素晴らしかった。笑い過ぎて、涙が出た。例によって、予備知識ゼロで観た米映画「リトル・ミス・サンシャイン」(監督はジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス夫妻)。とんでもなくおかしく、途方もない傑作である。単に傑作とすればいいのに、わざわざ「とん.... ...続きを見る
万歳!映画パラダイス〜京都ほろ酔い日記
2007/01/12 12:05
★「リトル・ミス・サンシャイン」
2006.12.23劇場公開作品っていろいろあって・・・ 「大奥」は、フジテレビくさいし・・・ 「鉄コン筋クリート」は絵がごちゃごちゃしてそうだし・・・ 「シャーロットのおくりもの」は動物が喋ってそうだし・・・ まっ、後々これらの作品も見ることにはなるんでしょうけど、 まず、上映時間が、ちょうどぴったりだったこの作品を観ることに・・・。 ...続きを見る
ひらりん的映画ブログ
2007/01/18 03:06
リトル・ミス・サンシャイン
 かなり以前に観ていた映画で、そろそろ感想をUPしようと考えていたところ、アカデミー賞の4部門(作品賞、助演男・女優賞、オリジナル脚本賞)に ...続きを見る
シネクリシェ
2007/01/24 23:09
150.リトル・ミス・サンシャイン
嫌味のない笑いと、無理のない展開、これに心からの感動まである、本当に3拍子揃った傑作のように思う。一人ひとりのエピソードも、すごく良く描けていて、すんなりとした呼吸を感じる様は、見事の一言。お正月一番オススメの映画!なんて声高に言いたいです。まるで自分が.... ...続きを見る
レザボアCATs
2007/01/25 20:54
リトル・ミス・サンシャイン
ロードショー中の映画「リトル・ミス・サンシャイン」を観賞。第19回東京国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀主演女優賞、観客賞など最多3部門を受賞した作品。監督はジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス夫妻。出演はグレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル ...続きを見る
やまたくの音吐朗々Diary
2007/02/09 23:20
幸せの黄色いミニバス〜『リトル・ミス・サンシャイン』
 崩壊寸前の機能不全一家が、娘のミスコン出場のため、おんぼろのミニバスに 乗り込んだ。旅の途中で起こる様々な困難にぶつかりながら、家族が一つに再生 してゆく過程を描いたハートフルなロードムービー。  この映画& ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2007/02/13 22:45
『リトル・ミス・サンシャイン』
人間には2種類あるそれは勝ち組と負け組みだバラバラな家族が、家族再生の旅に出る &nbsp; ■監督 ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス■脚本 マイケル・アーント ■キャスト グレック・キニア、スティーヴ・カレル、トニ・コレット、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン、アラン・アーキン  □オフィシャルサイト  『リトル・ミス・サンシャイン』 アリゾナに住む小太りなメガネ少女・オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、ビューティー・クィーンになる事。 コンテストのビデオを研究したり、... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2007/02/15 12:47
「リトル・ミス・サンシャイン」(2006)
監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス 出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン、ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン 他 原題:「LITTLE MISS SUNSHINE」 アリゾナ州に住むフーヴァー一家は、家族それぞれに問題を.. ...続きを見る
TMDiary
2007/03/01 00:47
リトル・ミス・サンシャイン
 いやもう泣かされたなぁ。涙涙、こんなに泣いたのは昨年の邦画の快作「フラガール」以来。  ただ「フラガール」が正面きってドン!と泣かせるドラマを作っているのに対し、本作は家族の絆に的を絞って、家族一人一人の問題を丁寧に描いていく。 ...続きを見る
明け方シネマ
2007/03/28 12:26

コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ふふふ・・・ご無沙汰しておりました、お久しぶりです栗本さん。
(↑なんで笑うのか自分でも不明)
押し付けがましさがない心地良い作品でした。
それにしてもラストのオリーヴちゃんのコンテストのダンス、審査員のオバチャンは
「不謹慎な!」みたいに怒りまくっていたけど他の子供だって妙な色気を
振りまいて同じようなもんじゃ・・・?と思ったりして。
いずれにせよ気味悪いですよ、あの類のコンテストは。

とりあえずそんなこんなで今年もそろそろおしまいですね。
フラリとたまにやってきては好きにコメントして帰らせていただいておりますが今年はお世話になりました。
来年もヨロシクお願いいたしますです。
良いお年をお迎えくださいませ。
sabunori
2006/12/31 22:17
>sabunoriさん、こんばんは。
あけましておめでとうございます。
暮れのご挨拶には間に合いませんでしたが、
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
何かのついででもあればまた、
いつでもフラリとピンポンダッシュしていってください(笑)。

さて映画ですけど、
>押し付けがましさがない心地良い作品でした。
この一点に尽きると思います。
クライマックスの部分は、たとえば、
「めちゃイケ」などのバラエティ番組を何かと攻撃したがる、
勘違い系良識派気どりの手合いも揶揄していて痛快でした。
オリーヴ以外の女のコなんて動物扱いと同じでしたモンね。
アメリカ映画を見直したくなるような好篇だったと思います。
今年もこういう映画がたくさん観られるといいですネ。
栗本 東樹
2007/01/06 18:55
こんばんは★
>勝ち組を目指そうとたとえ負け組に括られようと“家族”なんて永久に不完全なままだ
うーんmmm。さすがの一言ですね!そうなんですよね、金持ちだろうと貧乏だろうと、人生の勝ち組・負け組関係なしなのが、この“家族”という、小さい核のものなのかもしれなくて、
それが、その勝ち負けと十字を切るかのように、交差したメッセージが、そこにあったんですね!
いやはや、いろんな方の意見を読んでも、なお、ハッとするものがあるのが栗さまの記事なんですよね。むむむっ。
とらねこ
2007/01/25 20:52
>とらねこさん、こんばんは。
(あ、俺の呼び方戻った♪)

バラバラだった一家が再生するという、
こうした心温まる映画が公開されるのと時期を同じくして、
渋谷である一家が文字通りバラバラになる事件が起きたのは、
なんとも皮肉な話じゃないかと思います・・・。
金は欲しいし、必要だし、
あればあるに越したことはないと思うけど、
やっぱり幸せだけは金じゃ買えないと強く感じる今日この頃。

映画のなかのあの一家は、
決して金じゃ買えないモノを手にしたんでしょうね。
ささやかなラスト・シーンが印象に残る秀作でした。
栗本 東樹
2007/01/27 21:24
栗本さま、こんにちは。
貴ブログの記事は結構マメにチェックしてると思っていましたが、この映画の記事もあったのですね。
今更ですがTBさせて下さい。
あれよあれよという間に、オスカーの大本命(?)って感じですね。
私は6人のアンサンブル演技もよかったのですが、脚本がいいと思ったのでオスカー是非!と思っています。
ではでは、また来ますね!
真紅
2007/02/13 22:49
>真紅さん、こんばんは。
真紅さんにマメにチェックしていただいているとは光栄です。
どうもありがとうございます。

>あれよあれよという間に、オスカーの大本命(?)って感じですね。
ねぇ、驚いちゃいますよねぇ。
ですが、こういうタイプの映画には、
ヘンにオスカーとか獲ってほしくない気がします。
脚本賞はアリかもしれませんよね。
栗本 東樹
2007/02/16 20:29