瓶詰めの映画地獄 2009

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help リーダーに追加 RSS この、病める現代日本をブッ飛ばす大傑作を観逃すな! 『悪夢探偵』!

<<   作成日時 : 2007/01/16 07:00   >>

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年が明けてまだ半月しか経過していないというのに、
年頭から背筋の凍るような事件ばかりで世の中ムチャクチャだ。
というより、事件そのものが浮世離れしすぎていてあまりに現実味がなく、
それこそ、イーライ・ロスの 『ホステル』 や 桐野夏生の 『OUT』 もびっくりの内容で、
そんな現実を反映して娯楽となりうる映画や小説さえまるで子供騙しでしかないかのよう―。

渋谷区で起きた、2つの陰惨極まりない事件。
実は双方ともボクの勤め先からほど近く、
とくに一方は本当に近いというより同じ町内なので、
ニュースで現場付近の映像を見た時は心の底から驚いた。
先週ぐらいは、勤め先の近所の人と顔を合わせればその話……。
だけど話していても、TVの向こうの芸能ゴシップで騒ぐのと感覚的に違いはなく、
そんな自分の不謹慎な感情にまたギクッとしてみたり……。
けっきょく会話の締めは、「嫌な世の中だねぇ」 「嫌な世の中ですねぇ」
「ああ、いやだ、ああああ、いやだ、ああ、いやだ」
ボクたち現代人は多かれ少なかれみんなどこか大切な感覚が麻痺していて、
それで他人の感情や肉体に“体温”を感じることができないようになっているのかもしれない。

だけど、皮肉な話、社会が不安に充ちていればいるほど、
逆に映画は面白くなるという“不文律”みたいなものがあって、
それは映画に限らず創作表現というものはどこかで社会の“負”、
人間のマイナスの感情を呑み込んで輝くことがあるからだと思うんだけど、
そんななか、まるでその不文律をここにまた証明するかのように、
現代社会のダークな感情を丸呑みしてなおかつそれを、
怒涛のエンターテインメントとしてドバッと吐き出したようなトンデモナイ大傑作が誕生した!
それがこの、日本映画が世界に誇れる数少ない鬼才、いや巨匠のひとり、
塚本晋也監督待望の長篇作品10作目、『悪夢探偵』 だ!

恥ずかしい話、ボクは最近まで塚本監督の名をどこかで忘れていたような気がするんだけど、
(前作 『HAZE』 は力作とは言え短篇だったし、『ヴィタール』 はチョット不発だった気がするし)
ここへきて、ようやくやるべき人がやってくれた、そんな歓びだ。

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 キャリアから現場勤務になったばかりの女刑事・霧島慶子(hitomi)は、
 着任早々、謎めいた変死事件を担当することになる。
 夢を見ながら自分を切り刻んだという目撃者の意味深な証言、
 そして死者たちが死ぬ直前に「0」という人物と話したことを示す携帯電話の発信履歴から、
 事件を解く鍵は“夢”にあると推測。現実的な捜査を進める一方で、
 他人の夢の中に潜り込める能力を持つという影沼京一(松田龍平)の存在を知った慶子は、
 “悪夢探偵”と呼ばれる彼に協力を求めるが……。

まるで入場する時の鈴木みのるみたいな黒マントをかぶった松田龍平扮する影沼京一が、
死が近い近親者の悪夢の原因を探るものの、死なせてしまいその親族からなじられ、
病室を追い出されたところで「ああ、いやだ、ああああ、いやだ、ああ、いやだ」
と呻く場面にタイトルが浮かぶオープニングから鳥肌はマックス全開立ちまくり!
いつもながら叙情性さえ薫る石川忠の五感を揺さぶる重低音サウンドに乗って、
夢と現実が巧みに交錯する驚愕の悪夢映像のパラレル・ワールドが展開される。

と言ってもこの映画を言葉で説明するのは難しいので(難解ではないけど)喩えて言えば、
本作は、『ジェイコブズ・ラダー』 に 『カフカ 迷宮の悪夢』 を足して 『CURE』 で割り、
そこへ 『パプリカ』 をスパイスしたような映画。
しかも塚本監督は、映像で悪夢を表現する上でクエイ・ブラザーズの傑作パペット・アニメ、
『ストリート・オブ・クロコダイル』 の世界観を意識したという(凄ぇ!)。

何者かが自殺志願者の“夢”という一種の無意識の中に潜り込み、
夢の中でなぶり殺しにして現実にも志願者の本懐を遂げさせるという驚愕の設定が描くのは、
毎年、年間自殺者が3万人を超えて、
余裕のない日々のなかで他人への憎悪の感情だけが膨れ上がった人々の跋扈する、
超ストレス社会が今にも出口を探して暴発しそうな現代日本という病巣……。

主人公の影沼京一も、そしてこの映画に登場する全員が、
傷口が膿んで凝り固まったような社会に嫌悪感を覚えながら生きている。
京一は子供の頃に世界のすべてに絶望するに充分な惨い体験をしていた。
でも、絶望していても死ぬに死に切れず、
特殊な能力ゆえに人の心の闇を覗いてしまい「嫌だ嫌だ」とつぶやきながらも、
しかし言わば“毒を喰らわば皿まで”と人の悪夢に溺れることが、
彼にとって心の再生へ向けた荒療治となってゆく。

そんなどこか現実離れしていても親近感を覚える京一というアンチ・ヒーロー像を、
松田龍平が父親を上廻るような独特の気怠い存在感で好演。
自身も実は拭えないトラウマを抱えて、
しかし気丈に社会へ挑みやがては京一を導くヒロインの女刑事、慶子を、
これまた演技初挑戦というhitomiが息を呑むような美脚も露わに熱演すれば、
脇を固める大杉漣もほかにはない味わいを醸し安藤政信がキレた演技を大力演。
当然、いつものように塚本監督自身もいつも以上にイカれた役で怪演を見せてくれる。

物語はラストへ向けて爆走しながらも決して途中で破綻を来たすことなく、
それを圧倒的な映像と音楽がガッチリ支えこの上ない酩酊感を味わわせる。
背筋のゾクゾクするような監督面目躍如のビジュアル・ショックに五感も戦慄き、
とくに人間の口がムギュ〜とすぼんで首がブルブル震えるシーンなんて最高だ!
( 『ジェイコブズ・ラダー』 の“精神病院で首がガクガク”シーンへのオマージュか?)

時代の最先端を行くこれぞ世界水準の映像表現と、
昔懐かしいTVヒーローもののアナログな感触との淫靡な融合を大スクリーンで堪能すべし!
“都市と肉体”にこだわり社会の負を呑み込んで、
病める現代をブッ飛ばす漆黒のエンターテインメント!
『悪夢探偵』 は、間違いなく、『六月の蛇』 からさらに進化を遂げた、
21世紀・塚本晋也の最高作であると同時に早くも本年ベスト級の大傑作である!

だけど、こんなにクソ面白ぇ映画が日曜の昼日中でも満席にならないなんて・・・、

あぁ…いやだ、あぁ…いやだいやだ、あぁ…いやだ……。

シネセゾン渋谷 にて公開中 ]

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タイトル (本文) ブログ名/日時
「悪夢探偵」
 悪夢探偵 オリジナル・サウンドトラック ...続きを見る
NUMB
2007/01/18 10:31
悪夢探偵(1/13公開)
 1/17、シネセゾン渋谷にて鑑賞。8.0点。  映画において、大音量の効果音というやつは使い方が難しい。たとえばホラー映画でこれを頻発したりすれば、その時点で下手糞な映画作家だと断定されかねない。いきなりの大音量が人間を驚かすのは当たり前のことだし、そんなもので与えられる恐怖というのは文化祭のお化け屋敷と同レベルだ。また、格闘アクション映画での効果音の多用は、「誤魔化し」として受け取られやすい。一般的なドラマ作品でこれを使うというのも、度をわきまえないと下品な演出になる。  しかし本作監督の塚... ...続きを見る
第八芸術鑑賞日記
2007/02/06 01:35
悪夢探偵 07027
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猫姫じゃ
2007/02/08 16:55
#23.悪夢探偵
龍平最高!!! 龍平最高!!!  龍平最高!!!いやぁ〜。面白いです。特に松田龍平! ...続きを見る
レザボアCATs
2007/02/10 13:20
悪夢探偵
 もともとホラーがあまり好みではなく、時々しか観ることがありませんが、幸いなことに外れることはあまりありません。  たとえば一般的にはあまり ...続きを見る
シネクリシェ
2007/02/18 18:17
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 塚本晋也監督の『悪夢探偵』は、スペインのサン・セバスチャン ホラー・ファンタジー国際映画祭2006に出品されたのですが、その質疑応答(記者会見)の様子がYou Tubeに投稿されていました。ちょっと面白かったので、それをここに書き出してみたいと思います。 ...続きを見る
海から始まる!?
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悪夢探偵:「共感」や「つながり」の生まれる可能性
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犬儒学派的牧歌
2007/03/06 22:41

コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
おお! 早くも今年の大傑作がw 陰鬱な部分、ネガティブ精神が大きければ大きいほど映画に限らず音楽やその他芸術作品は生まれやすいと思います。地位や名誉、認められたアーティストってどんどんダメになる確率が非常に高い気がするんですが、塚本晋也は安定してますね。周りに惑わされず、ぶれない確固たる何かを持っているような。松田龍平って出たての頃はいけ好かないガキだったけど、どんどん良くなってるように思います。
現象
2007/01/16 13:02
>現象さん、こんばんは。
はっ、鬼に笑われそうですがコレは完璧に今年のベストです(笑)。
(て去年も今頃 『ホテル・ルワンダ』 観てそう言ってたような…)

不安な社会と芸術の相関性は、たとえば、
80年代がスカだったことを振り返れば一目瞭然ですよね。
(石井輝男御大も実は80年代には1本も撮ってなかったり…)
だけど塚本晋也や園子温は80年代ベースの人なワケで、
あのスカスカの時代にしっかり地盤を固めていたことが、
今も周りに惑わされない確固たる何かにつながっているんだと、
密かに確信していますと言いつつホントはテキトーです♪

松田龍平にはガンバって父親を超えてほしいですよね。
サラブレッドとして揃うものはみんな揃っているんだし。
龍平が映画の中でつぶやく「ああ、いやだ」は、
渡辺謙の「バンザーイ」並みにツボでした(笑)。ぜひ!
栗本 東樹
2007/01/17 02:12
栗さまこんにちは♪また来てしまいました・・・。
これ、今年のベスト予定ですか^^ナント〜♪
>松田龍平が父親を上廻るような独特の気怠い存在感で好演
おお、そうですか、そうですか!父親を上回る!嬉しいですねえ。
私は龍平最高!!だったと思います!!
ああ、好きだ好きだ好きだ・・・龍平が大好きだ・・・

>、『ジェイコブズ・ラダー』 に 『カフカ 迷宮の悪夢』 を足して 『CURE』 で割り、そこへ 『パプリカ』 をスパイスしたような映画
おお、私『CURE』は見ていませんが、それ以外は全部私の印象に残る大好きな映画ばっかしです♪
でも、正直、『ジェイコブズ・ラダー』も『カフカ〜』も、さっぱり意味分かってないんですけどネ♪
とらねこ
2007/02/10 13:49
>とらねこさん、こんにちは。
いつでも歓迎致しますよ。なんせ暇な店なので♪

オォ、とらねこさんはずいぶん龍平くんにご執心ですね。
キレ長の目をしているワリにやさしげな雰囲気もあり、
さすがはサラブレッドだと思いますよ。
本当に親父に似てきたなぁ(とくに声)としみじみしました。
もっともっと親父に負けないイカレた役も演ってほしいです。

『ジェイコブ〜』 も 『カフカ〜』 も面白いですよね。
まぁ観たのは10年以上前なんで細かい話は憶えてませんが、
なんとなく雰囲気で挙げてみましたぁ〜♪
栗本 東樹
2007/02/12 12:56
こんばんは、ご無沙汰しております。
>社会が不安に充ちていればいるほど、
>逆に映画は面白くなるという“不文律”
なるほど、そうかも知れませんね。
考えてみれば、現実社会の鬱陶しさ・煩わしさから逃避したいがゆえに、私は映画や音楽の中に浸って面白さを見出そうとしております。まあ、最近はそれすらも煩わしくなりそうですが(苦笑)。ともあれ、松田龍平の鬱屈した主人公には強く共感しました。気がつけば今日も「ああ、いやだ、いやだ」と呟いています(笑)。
>『ストリート・オブ・クロコダイル』 の世界観を意識したという
そうだったのですか・・・あの映画はさっぱり訳が分からず途中で寝てしまったことを覚えています。この『悪夢探偵』でも少しウトウトしたことを考えると、どこかしら通じるところがあるのかも。
つまらないことばかり書いてすみません。
狗山椀太郎
2007/03/06 23:49
>狗山さん、こんばんは。
ツマラナイことばかりなんて何を仰いますか。
しっかり記事に呼応してくださる狗山さんのコメントを、
オイラはいつも楽しみにしているのです。

>最近はそれすらも煩わしくなりそうですが(苦笑)。
わかります(笑)。
なんか映画観るのさえ億劫な時ありますよね。
プチ・ミドルエイジ・クライシスでしょうか・・・。
なので主人公のやさぐれ具合には俺も強く共感できました。
「ああ、いやだ、いやだ」
ホント、毎日そんなことばっかりですよ。ふぅ。

『ストリート〜』 は意味サッパリですよね。
だけど短篇だし、あのグロい世界観はかなり好きです。
この映画観てウトウトしてると、
寝てる間に“0”が入ってきますよ!
栗本 東樹
2007/03/07 19:26