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本当に本当に途轍もない、どうしてこれほど激しく心を揺さぶられるのかすぐには自分でも把握できないほどに、 これは、正真正銘、比類なき傑作である。本当に感動した……。封切られて、まだ1週間しか経っていないけど、 ボクはこの、今や巨匠の中の大巨匠、クリント・イーストウッド監督の、監督作としては栄えある30作目に当たる、 『インビクタス/負けざる者たち』 をすでに3回映画館で観ている。ちなみに観たのはいずれも豊島園のシネコン。 これまた傑作だった、『チェンジリング』 封切が昨年の同じく2月なので、その後の 『グラン・トリノ』、そしてこれと、 たった1年の間にイーストウッドの新作が3本も観られるというだけで映画好きとしては充分至福なことなんだけど、 同じ映画を1週間のウチに3回も、それも映画館で観るというのはひょっとしたら人生、初めての経験かもしれない。 いや、小学6年生の時の、『プロジェクトA』 以来かな? ちなみに割引券とポイントを利用したから3回観て2000円。 まぁとにかくそれほど感動したということを少しでも誰かに伝えたいって話なんだけど、1回目に観た時はただただ、 胸の奥深くへと打ち寄せる魔法みたいな映画的快感に身を委ねているウチにアっという間に時間が過ぎてしまい、 立て続けの2回目は、なぜそんなに感動したのかを分析しながらワリと冷静な気持で鑑賞し、そしてそれを踏まえ、 中1日置いた3回目は細かいことを考えないで観て、それゆえに、1回目や2回目の時以上に深く感動してもう号泣。 映画って本当に素晴らしいよなぁ〜と心から思う今日この頃だし、そこでまた3回目を観た先日2月11日というのが、 奇しくも“ネルソン・マンデラ”が27年の獄中生活より解放された日からちょうど20年ということで感慨もよりひとしお。 映画は当然、マンデラについて詳しく知らなくても(またラグビーについても)感動できるように創られているんだけど、 しかしやっぱり本作を観るのであれば、多少なりともマンデラについて知っておく方が賢明とは言えるかもしれない。 そこで、マンデラについてよく知る上で非常に有効じゃないかと思うのが、3年前に公開された、デンマークの名匠、 『ペレ』(’87)や 『愛の風景』(’92)といった名作でも知られるビレ・アウグスト監督の 『マンデラの名もなき看守』 で、 この映画は南アが“アパルトヘイト”真っ只中だった時代を背景に、ロベン島の刑務所に収監されているマンデラと、 彼の人柄に触れてしだいに考え方を変えてゆく、元は、白人至上主義者である看守との心の交流を端正に綴った、 まるでヒットはしなかったんだけど観逃すにはゼッタイ惜しい傑作なんだ。これを観ればモーガン・フリーマン扮する、 マンデラの人となりにもグッと気持が入っていいと思うし、『インビクタス』 は、まさに 『マンデラの名もなき看守』 の、 これまた涙なしでは鑑賞不能な感動のラストから始まる物語……。というワケで、ソロソロ本題に移りたいんだけど、 残念ながら本当に感動しすぎて、この気持をソコのアナタへと伝え切る言葉も自信も今のボクにはチョットない……。 1990年2月11日に27年の獄中生活から解放されたマンデラは、いまだアパルトヘイトの影響色濃い中の1994年、 全人種参加の国民総選挙によって南アで初の黒人大統領となる。世間じゃ白人が黒人たちからの報復を警戒し、 政府内でも白人職員は彼が就任した途端に自分たちはクビになるものだとばかり思って戦々恐々とするんだけど、 しかし、そんな誰もの心を見据えているように、マンデラは白人職員の雇用を明言。さらには目立つという理由より、 昨日まで敵だった白人警官をSPにつけて、黒人SPの教育へとあたらせ、白人と黒人の融和の端緒にしようとする。 そしてマンデラがどんな政策以上にマズ力を入れたのは、南ア白人が愛好する、要はアパルトヘイトの象徴だった、 ラグビーを強化することだった。南アでは、翌年にラグビーのワールドカップが開催されることになっていたんだけど、 アパルトヘイトで長年国際試合から締め出されていたチームは、“南アの恥”と呼ばれるくらい弱体化していたのだ。 という具合に、マコト偉大な政治家の物語と、そんな弱いチームがたったの1年でW杯で優勝するまでを描くという、 本来であればそれぞれで2時間半くらいの大作にもできるような内容を2時間14分に収めたというのがこの映画で、 凄まじい素材的ボリュームを少しも窮屈に見せない、イーストウッドの神業にしか思えない演出手腕が冴えに冴え、 2つの物語的柱を巧みに融合させながら、映画は、号泣必至のクライマックスに向けて観る者を誘っていってくれる。 冒頭のシーンをはじめに、黒人と白人の混成になったSPチームの一触即発の緊張感や、マンデラが初めに訪れる、 ラグビー場のシーンだけで南アにおける人種対立の歴史を見せ切ってしまうあたりが本当にムダがなくて見事だし、 映画はハッピーに終わるからといって、サッカーW杯を前に知られている通り南アは今なお混沌としているんだけど、 イーストウッドは“赦し”こそを武器にしたマンデラ流のリーダーシップを描くことで人の世の希望を見出さんとする―。 27年間も獄中生活を強要されながら、しかしその中でただ抵抗するだけじゃなく相手の懐へと入ることも必要だと、 白人文化に積極的に触れて、勉強し、大統領となってなによりも和解を唱えたという凄く素晴らしい政治家なのに、 一方では、奥さんや娘さんと折り合いがつかず日々悩んでいる等身大の1人の男という、実に人間臭いマンデラを、 個人的にもマンデラとは長年の付き合いがあるというモーガン・フリーマンがさすがの存在感で実に魅力的に体現。 と同時に、イーストウッドが最も信頼を寄すフリーマンのマンデラは、長年、映画の中で悪人をバンバンと殺しまくり、 女を散々と泣かしながら(これはきっとプライベートでも)、『許されざる者』 以降、“贖罪”がテーマの映画を創り続け、 そして 『グラン・トリノ』 でそれとともに寛容と和解についてを描き切ったイーストウッド自身の姿とも重なって見える。 前作で一つの“答え”を示した彼がマンデラという素材を引き寄せたのは至極自然な流れだったんではなかろうか? もちろん本作はマンデラの物語を通し悲劇の絶えない世界へメッセージを発信している面もあるとは思うんだけど、 しかしそれ以上にイーストウッドが描こうとしたのは多分、自分が今日まで知らずにいた世界へとあえて飛び込み、 その世界ならではの価値観を自分のものにして、そしてそれを今まで培ってきた価値観と融合することで得られる、 楽しさとか充実感みたいなものだったんじゃないかと思う。要は自らもラグビーを楽しみメディアをガンガン利用して、 白人社会モロトモ国家をまとめることをある意味楽しんでいたんじゃないかという、その豊かなバイタリティーにこそ、 イーストウッドはマンデラの獄中生活を耐えた精神力や、独創的発想の根幹を見ようとしたんじゃないかと思うんだ。 確かに人は、歳を喰うと自分の価値観だけに縛られてそこから一歩も出ようとはせず、だから人を差別したりもする。 そこから一歩踏み出す勇気さえあれば、和解なんて簡単だし、差別なんかすぐになくなるということなのかもしれん。 一方そんな感じでマンデラが魅力的に輝いているのも、対となるラグビー・チームの主将のフランソワ・ピナールが、 マット・デイモンの好演によってキャラとして映えているからで、白人至上の父親を持ち選挙にも行かなかったのが、 マンデラと出逢ったことで、自分を変えようとし、そしてチームも変えていこうとするその姿がこれまた凄くカッコいい。 ハードなトレーニングによって、まさにラグビー選手的肉体となったデイモンの繊細で知的な芝居も本当に見事なら、 彼の芝居が抜群だからこそともすればウソ臭くなりがちな(実話とはいえ)この物語にも説得力を感じることができる。 ピナールがチームとロベン島を訪れマンデラが実際に収監されていた刑務所の独房を見るという件があるんだけど、 彼がそこで、長い獄中生活の心の支えにしていたという、マンデラが教えてくれた一篇の詩句を想い浮かべながら、 静かに士気を高めてゆくシーンは本当に素晴らしいし、それはどんな和解を唱えた言葉よりも雄弁な説得力がある。 政治家が主人公の映画ということで印象は一見小難しく思えるかもしれないけど、そこはイーストウッド映画らしく、 話は究極にシンプルでストレート。新聞配達やジャンボ機の件など時にサスペンスっぽい盛り上げ方も功を奏すし、 余白さえ醸し出しながら2時間強の尺をなめらかに見せてくれてその語り口は本当に絶品だとしか言いようがない。 登場人物だってケッコウ多いにもかかわらず誰1人を疎かに描くことはなく、クライマックスの決勝戦のシーンはもう、 ラグビーなんてわからなくてもあらゆる撮影法の妙で信じられないようなカタルシス!(NZチームの“ハカ”が最高!) 最後まで「ラグビーは嫌いだ」と言っていた黒人SPが白人SPとついに握手をする場面は声を上げて泣きそうになる。 愛のある物語、至高の演出、最高の芝居、大胆な映像、胸に響くサントラ、なにしろ書いても書いてもキリがないし、 マンデラがその詩の一節を心で読むラスト・シーンを想い出しながら書いている今もボクはマジで涙ぐんでいる……。 **************************************************************************************** たとえ人目に触れる機会なんて微々たるものでも、こうしてネットへ晒す以上、映画の感想を書く時には毎回毎回、 それ相応のプレッシャーを感じながらどうにか書いているんだけど、正直、今回ほどプレッシャーを感じたこともなく、 好きに書けばいいのに映画の感動をどう文章にしたらいいのか悩んで、少し胃が重かったっていうのはホントの話。 だけどそんな時にボクに“書く”勇気をくれたのは、ラジオでやっていた小学生の作文コンクールかなんかの模様で、 子供らのあまりにもストレートなんだけど的確な言葉選びに感動し、それでよし俺も!と書く気になったというしだい。 やはり何ごとも、シンプルでストレートがイチバン。ありがとう!子供たち! そして今回もありがとう!イーストウッド!! ハッキリいって、ボクはアナタを愛してます……(照)。とにかく!2010年のベスト1はこれまたハッキリいって確定な、 奇蹟みたいに最高の映画 『インビクタス/負けざる者たち』! 1人でも多くの人に観てほしい。そして知ってほしい、 これが、“映画”だということを……。こんな大傑作を世へ送り出しながら早くも巨匠は新作を撮っているみたい……。 『ヒアアフター』 という超常現象を描いた映画らしい―。本当に、イーストウッドという“巨人”は何者なのだろうか…!? [ ユナイテッド・シネマとしまえん(豊島園) ほかにて公開中 ] |
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