スパイク・リーの本格派クライム・サスペンス! 『インサイド・マン』

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いわゆる“衝撃のラスト”とか“驚愕のドンデン返し”という仕掛けは映画のひとつのウリで、
そこにこそ刹那的なカタルシスを求めて映画を観る人もきっと多いと思うんだけど、
個人的にボクはそのテのギミックが好きじゃないし、
だから 『24』(古い!?)なんて全然面白いと思わない。
でもそれは、先が読めすぎてつまらないからという高飛車な理由ではなく、
基本的にボクは人が好くて騙されやすいから謎解きとか苦手なんだけど、
とにかく結末が知れたときに「だからなんだ!?」と言いたくなるようなものが、
あまりに(とくに最近)多くて心底ガッカリするからだ。
世の中は確かに、“終わりよければすべてよし”というところがあるけれど、
ほとんどの場合、映画にそれは通用しない。“衝撃のラスト”も“驚愕のドンデン返し”も、
些細な描写の積み重ねによるストーリー運びの妙があってこそはじめて引き立つワケで、
即物的にやれ実はあーでしたこーでしたでは結末が訪れる前に物語に飽きてしまう……。
まるで目くらましみたいにカットを細かく割ったり画質に凝るようなタイプのミステリー映画も、
中身のなさをファッションでごまかすタイプのヤツのようで好きになれない。

そんななか、
潔く娯楽に徹しながらも安易なドンデン返しなどのギミックに頼ることなく、
決して複雑ではないストーリーを絶妙で軽快な語り口でユーモアさえ散りばめて、
緊張の糸が最後の最後まで弛むことなく久々に本格派のミステリーを堪能させてくれるのが、
スパイク・リーの最新作、『インサイド・マン』 だ。
え!?と思った人はボクと同様多いだろうが、そう、コレ、あのスパイク・リーの映画なんだ。
スパイク・リーと言えば、人種の問題を扱った社会派の監督、
もしくは黒人社会の日常をやさしく見つめるヒューマン・ドラマの監督という印象があるけれど、
『マルコムⅩ』 にしてもそのほかの作品にしてもなんか湿気っぽいのが嫌で好きになれず、
『ガール6』 や 『ゲット・オン・ザ・バス』 あたりは好きだけど、
前作の 『25時』 も、“9.11”以降のN.Y.をテーマにしたのはいいがやはり説教臭くて生煮えで、
なんだかなぁー(阿藤快)と腕組みしながら思っていた。
ところが予告篇の段階から明らかに雰囲気が違うのでコレを観ようと考え、
そしてその前に、今までに観逃していた何本かのスパイク・リー映画のなかから、
実在した連続殺人鬼の恐怖に支配されるN.Y.を描いた 『サマー・オブ・サム』 を観たら面白く、
勢いに乗りコレを観たら、「なんだなんだ!?」と身を乗り出すような面白さで小躍りしてしまった。

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 マンハッタンの銀行で強盗事件が発生して、
 犯人グループのリーダー、ダルトン(クライブ・オーウェン)は50人の人質をとって立てこもる。
 現場には、捜査官のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)率いる警察隊が急行するが、
 犯人グループが人質全員に同じ格好をさせたために突入することができない。
 やがてフレイジャーは、事件発生から7時間経っても行動を起こさない彼らに対し、
 何か別の目的のため時間稼ぎをしているのではないかと疑問を抱くようになる……。
 そして現場には、銀行の会長から“ある秘密”を守るようにグループとの交渉役を任された、
 女性弁護士ホワイト(ジョディ・フォスター)が現れ、フレイジャーが深入りしないよう牽制する。

強盗グループに警察側が翻弄される事件の顛末をテンポよく描きながら、
要所要所で事件終焉後の関係者に対する取り調べのシーンを画質を変えて挿入し、
観客に終始ドラマに対する能動的な姿勢を促すという抜群の構成力。
従来の作品にあった社会派色を抑えたからこそはじめて活きる、
人種問題を真摯に扱ってきた監督ならではの軽快で嫌味のないブラックなユーモア。
それぞれが腹にイチモツ抱えながらも人間味豊かな憎み切れないキャラクターの魅力と、
それらミステリーを引き立てる要素がシンプルにラストへ向けてつながってゆくこの心地好さ、
これこそが、ミステリーをスクリーンで体感することの真の醍醐味なんだ。
決して複雑じゃないとは言え、確かに「ん!?」と思う部分だってあるけれど、
そんなものは映画を観終わった後にコーヒーでも呑みながらゆっくり考えりゃいいワケで、
そういう観終わった後に袖を引っ張られるような余韻もまたこのテの魅力。
要は散々美味いモン食べさせてもらったんだから、後片付けぐらい自分でしなさいよってこと。
何から何まで上げ膳据え膳じゃないと映画を観た気にならないという一部の人には、
もしかしたらこの映画の本当のキレとコクは伝わらないのかもしれないな。

デンゼル・ワシントンやクライブ・オーウェンはじめキャストも完璧。
なかでも、そんなに(いつもほど)見せ場が多いわけじゃないのに、
華を添えながら物語の一方の軸をなすジョディ・フォスターはさすがの貫禄と存在感。
また、ウィレム・デフォーを脇の脇に据えるなんてそれだけでも今作の贅沢ぶりがうかがえる。

ただ、この映画は、監督の持ち味であるハズのセリフのやりとり、
その“セリフ”そのものが映画の魅力の要をなしていると思うんだけど、
そこで果たして邦訳が戸田奈津子でよかったのかどうかというのがどうしても気になるところ。
まぁボクは英語なんてわからないので誰が訳したってけっきょくは同じなんだけれど、
でもデンゼルが恋人と電話で下世話なトークしてる場面で“ムスコがビンビン”てアンタ……。
ムスコがビンビンなんてフレーズ、何10年ぶりに聞いたよ!?
いくらなんでも、もっとほかに粋な訳し方があったと思うんだけどなぁー(再び阿藤快)。

それともうひとつスパイク・リーと言えば、
タランティーノと犬猿の仲ということで、ひと頃話題になったもんだけど、
タラが黒人ノリを気どり続けた挙句(原因)、無邪気な“アジア映画ごっこ”繰り返している間に、
リーはここまで大きく水を空けたということか。気がつきゃ彼もぼちぼち50歳かそこら。
作家としていい感じで力が抜けてきたという今作はそのなによりの証明なんじゃなかろうか?
とにかく、これからのスパイク・リーには期待できるゾ!
出てくる女優が巨乳揃いでやたらとエロいのも観逃せないポイントだ!

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