“カルト”不遇の時代に今、総進撃! 「妄執、異形の人々」+α

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一般人には到底理解し難い、
○○○な人が集まる団体をいわゆる“カルト”と呼び、
そこから意味が派生して、決して一般的じゃないんだけど、
一部で熱狂的なファンを獲得する映画のことを「カルト映画」と言う。
たとえばそれには、つい最近までユーロスペースで公開されていた、
『ミッドナイトムービー』 で扱われている映画なんかが代表として挙げられるワケだけど、
(ウォーターズの 『ピンク・フラミンゴ』、ロメロの 『ゾンビ』、ホドロフスキーの 『エル・トポ』 etc.)
しかし、ここまで世の中価値観やモノの捉え方が多様化すると、映画に限らず、
音楽やアニメやファッションと、一部の人のみが熱狂する対象というのは実は無尽蔵にあり、
気づけば今の世の中は、どこもかしこもそこらじゅう“カルト”だらけ、
だから、特別“カルト”と呼ぶべきようなものはどこにもないような気さえしてくる。

それに、逆の見方をすれば、
“カルト”とされる対象は過分に能動性を求めてくるものなので、ネットの利便性などに甘んじ、
自らの意志と行動によって、熱狂できる対象を探そうとしない人が多い(気がする)現代には、
“カルト”なんて呼ばれるものは、大した意義を持たないような気も個人的にはするワケだ。

だけど、何にせよ自分にとって“カルト”と定義できる対象を、
心の中に秘めている人とまるでそうじゃない人では、
繰り出す言葉の軽重に格段の差があるということだけは、
ボクが30数年生きてきて掴んだ紛れもない真実の一つ……。
(もちろん“人に迷惑をかける”ようなカルトまでがいいと言っているワケじゃない)

そんな中、今年の初頭、
ラブホ(ずいぶん行ってないな…)やクラブやライヴハウスなどが林立する、
ファッショナブルなヤングたちのプレイスポット、渋谷は円山町の一角に、
宇田川町から移転してきた新生ユーロスペースなどとともにオープンし、
“日本映画専門館”と堂々謳いながらそのふた月後には香港映画の特集を組んでしまうなど、
あまりに統一色の見られない特集企画の乱打ぶりに、
映画館としてそのものが“カルト”となりつつある「シネマヴェーラ渋谷」で現在開催中なのが、
まさにズバリのカルト映画特集上映、「妄執、異形の人々」。
この後に企画されているのが台湾の「侯孝賢(ホウ・シャオシェン)映画祭」だというのだから、
まったくもってコチラの方が企画の内容よりも驚きである。

「カルト映画、カルト映画」とさもわかったように書いてはいるけど、
別段、ボクはこのテの映画に決して明るいというワケじゃない。
そんな事情で、とある内部精通者のススメにより先日観てきたのが、
名前からしてアヴァンギャルドな大怪作(もちろん“東映”!)、『怪猫トルコ風呂』(1975)。
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もしかしたらわからない人もいるかもしれないので一応書くけど、
“トルコ風呂”というのは、ボクやアナタのお父さんが大好きな、
ソープランドの昔の呼び名である。

とにかくコレ、まさに“衝撃”のひと言。
昔懐かし大蔵イズム新東宝怪談映画の70年代東映バイオレンス・テイストかと思っていたら、
そんな通気どりの甘い想像を軽く凌駕する怒涛の展開に目はクギづけ。
天才が考えたとしか思えないクライマックスはまさに 『恐怖奇形人間』(写真トップ)的国宝級。
もしかしたら人によってその衝撃度は 『恐怖奇形人間』 を超えているかもしれない。
今回の特集ではすでに上映が終了してしまったのがなんとも残念。とにかく凄ぃ!凄すぎる!
山口和彦なんて監督、ボクは聞いたことないけれど、
天才すぎて陽の目を見なかった人なんではないだろうか…? どーでもいいが。

それに較べたら、池広一夫監督の 『おんな極悪帖』(’70)はごくごくフツーに傑作。
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権力の座を求めて男を喰い物にしてゆく女のヘバりつくような情念を、
頽廃の美学とでも言うべき様式美溢れるタッチで綴った1本。
岸田森といえばボクにとっちゃ「太陽戦隊サンバルカン」で、
それを見ていた時も子供心に「この人は…」と思うところが多分にあったんだけど、
この映画の岸田森(ちなみに故人)はそれどころじゃない。完璧に××××である。

SF篇からは案の定、本多猪四郎(いしろう)監督(初代 『ゴジラ』 )の 『マタンゴ』(’63)と、
松竹カルトといえば必ず挙がる 『吸血鬼ゴケミドロ』(’68)が参戦。
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『マタンゴ』
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『吸血鬼ゴケミドロ』

言っても誰にもわからないだろうが、
今年、再結成した大槻ケンヂ筋肉少女帯
80年代パンク・シーンを代表する(個人的に)名曲「マタンゴ」の元はコレ。“タマミ”は違うけど。

良識派の映画ファンがコゾって名前を挙げたがる名匠にだってカルトがある!?
という選択コンセプトなのかは知らないが、
名匠・市川崑監督の知る人ゾ知る傑作、『黒い十人の女』(’61)!
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というより、誰が血迷ったのか、30年前と同じ布陣でリメイクが決まった、
新生 『犬神家の一族』 の方が、間違いなくカルト化の予感がするのは、果たして気のせい?

最後にもう1本、“カルト”といえば当然この人!
昨年、惜しまれつつ他界し、一周忌企画としてリバイバルされた、
『異常性愛記録ハレンチ』 も連日好評だった(ウソ、連日ガラガラだった)、
タランティーノもジョン・ウーもリスペクト、よい子の映画ファンはみんな大好き!
“キング・オブ・カルト”! 石井輝男大先生、90年代の傑作 『無頼平野』(’95)!
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サブカルチャー以外はスッカスカでダッサダサでクソだった80年代がバブルとともに終焉し、
悪しき時代が置き去りにした“ホンモノ”にようやく目が向けられるようになった90年代。
そうした時代の潮流の中で不死鳥の如くよみがえった石井御大の、
見事な返り咲きっぷりを証明して頂点と相なったのがこの 『無頼平野』 だった。

なるべく石井御大に頼らないという意志なのか、
今回の特集では御大の出番は少ないけど、その代わり 『恐怖奇形人間』(’69)を特別上映!
3日間限定の上映予定だけれどいずれも超満員は確実なので、
出かける時は、時間に余裕をもって臨みたい。
劇場側も、見開き2ページのフライヤーの中心にコレを据えるなど自信満々だ!

観てから死ぬか、観ないで死ぬか、
別に観たからといって人生がよりよくなるワケではないけれど、
クソ平凡な毎日に気が狂いそうだったらマズは渋谷の片隅へ集え、そして狂え。
とても若者の街・渋谷の一角とは思えないような“異空間”がキミを待っている!

そしてキミが晩夏の渋谷で狂っている間、
ボクは下北沢で「鈴木英夫監督」特集だ。
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『その場所に女ありて』

「妄執、異形の人々」
シネマヴェーラ渋谷 にて9月29日(金)まで開催 ]
「監督 鈴木英夫」
シネマアートン下北沢 にて10月6日(金)まで開催 ]