かつて1人の政治家が唱えた、人類への提言を今… 『ボビー』

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夏期オリンピックと同じ年に行われ、
そこで選ばれた人物がアメリカどころか、
その後の世界さえ左右するという意味では、
オリンピックと同じくらい世界的なイベントと言っても過言じゃない、アメリカ大統領選挙―。
2008年の11月へ向けて本国アメリカじゃすでに盛り上がりを見せているようだけど、
当然、多くの日本人には無関心事でたまにTV等で関連ニュースを聞く程度。
そんなたまの関連ニュースで聞く限りじゃ、
初の女性大統領誕生につながるか? もしくは黒人大統領?
ということで現在民主党候補指名を競い合っている、
ヒラリー・クリントン上院議員(59)とバラク・オバマ上院議員(45)の対決が注目らしいけど、
いずれにせよアメリカには、もう二度とバカを選ぶのだけは勘弁してくれと願うばかり・・・。

そんななか、大統領選にさほど関心のない、
ボクを含めた多くの市井の日本人にとりそのキッカケとなりそうな映画が今回の 『ボビー』
1968年6月5日、ベトナム戦争がドロ沼の様相を見せ始めアメリカ国内も荒れ狂うなか、
全米国民から“ボビー”の愛称で親しまれ、ビートルズやボブ・ディランと同じぐらい、
希望の星として期待されていたロバート・フランシス・ケネディ大統領候補が、
遊説先のロサンゼルスにあるアンバサダーホテル内で凶弾に倒れて、
翌6日に42歳の若さで亡くなった……。
この映画は、その事件当夜のホテルを舞台に、
そこに実際に“いたかもしれない”22人の登場人物が、
アメリカの希望が潰える瞬間を目撃するまでのそれぞれの人間模様を描いた群像劇。

写真や概要からこういうどこか“リベラル”な匂いのする映画が、
六本木なんて下品なクセに最先端ぶってる街でしかやってないことが、
個人的にはすげぇムカついて仕方がなく正直行くべきか否か迷ったんだけど、
これはそんな“六本木+シネコン”という最悪条件を考慮しても観て損はない映画だ。

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 名門アンバサダーホテルの元ドアマン、ジョン(アンソニー・ホプキンス)にとり、
 慣れ親しんだ職場は自分の家みたいなもの。彼はいつものように、
 元同僚のネルソン(ハリー・ベラフォンテ)と2人、ホテルのロビーでチェスを楽しんでいた。
 そこへ、国民の期待を一身に受けた次期アメリカ大統領候補、
 42歳のロバート・F・ケネディ上院議員が到着する……。

という具合にこの映画は、
上に挙げたホテルの元従業員に、支配人と美容師の妻、
支配人と不倫の関係にある電話交換手の娘、
レストランの厨房内における人種関係や人間関係、
歌手としては峠を過ぎたアル中の女性シンガー、
大統領選挙のキャンペーンを支える側近たち、
選挙運動の新米ボランティアでありながらLSDにハマる若者、
彼氏を戦争へ行かせないために結婚式を挙げようとするカップル、
そして、“プラハの春”のチェコからケネディにインタビューするため訪れた女性記者などなど、
事件当日、アンバサダーホテルにはこんな人々がいて、
もしかしてこんな人生模様を繰り広げていたかもしれないという物語を描き、
そしてアメリカの希望が砕ける非業のクライマックスへと向けて彼らの物語を収斂させてゆく。

『ドリームガールズ』 とはまた違ったアプローチで往年の60'sを再現し、
要のクライマックスでは当時のニュース映像を駆使しながら臨場感も満点に、
40年も前の悲劇をこの21世紀という“テロの時代”に描くその目的はかなり明快。
それは、綾小路きみまろ風に言えばあれから40年!!!
どれだけ大国としてはブクブクと肥え太っても本質は何ひとつ変わらず、
どころか今再びかつてと同じ轍を踏もうとしている(もしくはとっくの昔に踏んでいる)、
アメリカという国の如何ともし難い学習能力の低さとそれでも望む未来へのかすかな希望―。

一見はリベラル気どりの芸能人が集まった政治映画ゴッコに思えるかもしれないし、
ヘタすりゃそれをまた 『サウス・パーク』 のトレイ・パーカーがネタにしそうな気もするけど、
しかし込み入った群像劇を流暢に語るその作風にはしっかりと骨があり訴える理由も明白で、
また人種や人権、性別の問題も問う群像劇としても 『クラッシュ』 よりコチラの方が断然好き。

監督は、本作にも出演しているマーティン・シーンの息子、エミリオ・エステヴェス。
エステヴェスと聞いて思い浮かべるのは、
『ブレックファスト・クラブ』 や 『セント・エルモス・ファイアー』 で、
恥ずかしい話、ボクはこの人が監督業もこなしていたなんて全然知らずにいたんだけれど、
なにより本作には、幼少時、父に連れられホテルを訪ねた記憶があるというエステヴェスの、
「今、これを作らなければいけない!」という熱い情熱が込められており好感度は極めて高い。
(マーティン・シーンは、ロバート・ケネディの熱心な支援者だったという)

ジョージ・クルーニーのように政治的題材をキザに扱わず、
等身大の群像劇を見せることで観る者に事件を身近に感じさせて、
そしてかつて1人の政治家が唱えた理想を現代への喝として今再び……。

選ばれる人のアジア観で日本のその後も大きく左右されることを思えば、
決してよその国の政治の話じゃすまされないアメリカの大統領選……。
その前に4月の統一地方選挙や夏の参院選とコチラにもあるけれど、
それも含め、政治や国の未来を身近に考えるにはいい刺激になるかもしれないそんな1本だ。

TOHOシネマズ六本木ヒルズ にて公開中 ]

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