キューバ今昔、裏表… 『コマンダンテ』&『低開発の記憶 -メモリアス-』

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正直、キューバに対しては、
(旅先として)アジアや東欧ほど興味はなく、
“キューバ映画”というのにもそんなに触れたことはないし、
なによりひと頃(と言ってもずいぶん前)やたらと街で見かけた、
“チェ・ゲバラ”Tシャツを着た人を案の定“斜め”に見ていたので、
ボクには、キューバに関して語れることは残念ながらほとんどない。

だけど、それでも、キューバと聞いて無視できないのは、
やっぱり彼の国に“社会主義的魅力”を大いに感じるから。
こういう(一応は)開かれまくった国にダラダラと住んでいると、
なぜか社会主義のやや“閉ざされた”感に惹かれてしまう。
(とは言えキューバはオープンマインドな国みたいだけど)

それに、キューバは同志である。
なぜなら昨年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝で、
ともにアメリカのグラウンドを踏み付けにしてやったから!
確か、決勝を前にしたキューバ・チームに対して、
カストロが、「“勝て”とは言ってない。“ベストを尽くせ”と言っている」と声明を出していたけど、
それって、逆にすげぇプレッシャーなんじゃ???
と、そんなとこにもまた社会主義的魅力を感じた。

というワケでこの、ハリウッド屈指の“曲者”鬼才監督、
オリバー・ストーンが2002年2月にキューバ最高指導者、フィデル・カストロに対し、
超VIP待遇のなか3日間、30時間に及ぶ密着取材を敢行したドキュメンタリー、
渋谷で公開中の 『コマンダンテ』(コマンダンテは“司令官”の意)を観ると、
今まであまり知らなかったカストロの真の指導者像の一端が垣間見えるのと同時に、
この御大がキューバ国民にとりどんな存在なのかを知ることができて大変興味深い―。

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とにかくこの映画が企画として成功した最大の要因は、
肝心要のインタビュアーが、“オリバー・ストーン”だということ。
最初はストーンがまた社会派ぶって撮った映画かと思っていたけど、
これはもともと、スペインのTV局かどこかが持ち込んできた企画らしく、
そんな気安さもあったのか“ドS”丸出しのニヤニヤ笑いを終始浮かべて、
鋭い、というよりは何かにつけてデリカシーに欠ける訊き方をしているあたりが面白い。

それに対してカストロはとくに無理した様子もなく余裕しゃくしゃくといった風情で、
ストーンのストレートな質問を時に真正面から受け、時に軽くかわしながら、
“キューバ危機”の真相や冷戦時代のソ連との関係、そしてゲバラとの別れなどを語ってゆく。
語られる内容そのものよりも、不躾なストーンとあくまで温厚柔和なカストロ、
その対比こそが本作最大の映画的魅力じゃないだろうか?
( 『ワールド・トレード・センター』 が、
 妙にやさしいテイストだったのは実はカストロの影響だったりして?)

本作を観る限り、キューバの社会主義指導者としてのカストロには、
隣のバカ将軍のようないわゆる“独裁者”といった悪いイメージはなく、
それは銃が適当に置きっ放し(!)にされた車でストーンと街へ繰り出し、
往く先々で国民(とくに若者)から熱い声援と眼差しを浴びまくる姿からも察せられる。
もしかすればそれも社会主義教育のなせるワザなのかもしれないと一瞬思うんだけど、
しかしラテンの陽光の下のカストロと若者のやりとりには健全な雰囲気しか感じられない。

昨年の病気療養のニュースを挙げるまでもなく、カストロとて御年80歳。
いずれ訪れるカストロ亡き後に当然予想されるキューバの混乱を考えれば、
果たして本当にカストロ指導の国政が国民にとってベストなのかはわからない。
だけど本当に国民に愛されている(としか見えない)その懐深い指導者像は、
ゴルフで優勝した15歳の少年の純真さえ参院選へのイメージアップに利用する、
この国の醜悪な指導者と較べても同じ指導者とは思えぬほどその資質は天地の差。
それを思い知るだけでも、この映画を日本人が観る意義は充分にあるとボクは思う……。



一方、上映館のユーロスペースで、
立て続けにレイトショー公開されている 『低開発の記憶 -メモリアス-』 は、
名作 『苺とチョコレート』 のトマス・グティエレス・アレア40年前の作品にして、
キューバ映画、伝説の傑作と言われる(ボクは知らなかったけど)レアな1本だ。
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舞台は、カストロが社会主義宣言をした1961年のハバナ。
ヌーヴェルヴァーグを思わせる美しいモノクロの映像で描かれるのは、
妻や両親はじめキューバ中の資産階級が当然の如く国外へと亡命してゆくなか、
ひとり取り残されるようにして国内に留まり、しかし国を覆う革命のウネリの“外”で、
「何も変わらない」ハバナをシニカルに見つめ続けるブルジョワ男のアンニュイな日常。

男はヨーロッパを基準にキューバを「低開発」の国と見ているけど、
とは言え映画の目線までが社会主義革命に対し批判的というワケではなく、
それはあくまで革命をひっ包めた60年代頃のキューバを検証する契機として機能する。
しかし、劇中に有名なカストロの演説(「祖国か死か」)の映像が差し挟まれるなど、
映像の質感がしっとりしているワリに、内容はやはり過分に刺激的で面白く、
いろんな意味で先の 『コマンダンテ』 と“対”になっているのが興味深い必見の映画だ。



いずれにしても、観るのであればやはり上記2作併せて観るのがベストだと思う。
最近の日本のキューバ人気にはどこか上澄みを啜ってるだけの印象があるけれど、
やっぱりよその国に興味を持つならその歴史(本質)にも興味を持つのは大切なことだ。
観る順番はいずれの映画が先でも同じだけど、
できればサラッとでもキューバの現代史をなぞっておくと、
より今回の2本が楽しめる、と、ボクも観終わって少し後悔した(?)。

ユーロスペース(渋谷) にて公開中 ※『低開発の記憶 -メモリアス-』 はレイトショーのみ ]

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