21世紀アクション映画の最高峰! 『ボーン・アルティメイタム』!

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先日、アメリカのホームレスの約4割が、
驚くべきことに退役軍人で、その中には早くも、
イラク戦争帰りの軍人もいるというニュースがあった。
要は常に身の危険に晒される非現実的な戦場体験がトラウマ化し、
帰国してからも人ゴミの中にいるだけで極度の緊張や恐怖を覚えたり、
物音に異常に過敏になったりそうこうするウチに社会生活が営めなくなり、
挙句は世間に居場所を失くしてホームレスに身をやつしてしまうという、そんな切ない話だ―。

やれ国益のためだ、テロとの戦いだと戦場に駆り出されては、
本来は市井に生きる人間が心を歪められてしまう容赦ない現実。
映画を観ていて、決して笑顔を見せない主人公ジェイソン・ボーンも、
不条理な戦場体験で人間性を奪われた、要はアメリカという歪んだ国家の犠牲になり、
挙句、さらにはその“手先”によって異形に変えられてしまった憐れな男なんじゃないかと、
つまり本作は究極のアクションの裏にそんな現実を孕んだ異形のヒーロー悲話じゃないかと、
そんな風に考えたら途端に感情移入できてしまい、大変面白く観ることができた!

そんなワケで待望のシリーズ第3弾、というほど実は待望していたワケでもなかったんだけど、
しかし本作を観た後じゃぜひこのままシリーズを続行してほしいと願わずにはいられない、
もはやマット・デイモンの生涯的代表作と言ってよいこの 『ボーン・アルティメイタム』

ズバリいってメチャクチャ面白い! 必見である。



先に断っておけばボクはヒットはしたけど作品自体の評判はあまりに芳しくなかった、
シリーズ第1弾、ダグ・リーマンの 『ボーン・アイデンティティー』 は実は未見のままで、
それでも充分面白かった前作、『ボーン・スプレマシー』 を受けての今回の鑑賞だった。

記憶を失くした主人公、元CIAの暗殺者、“ジェイソン・ボーン”が過去をたどることで、
自分を暗殺者に仕立て上げた、そして原因として恋人を奪った組織と追いつ追われつ、
というのがこのアクション活劇の骨子なんだけど、しかしコチラはコチラで前作は早3年前。
充分記憶が薄れているため、ジェイソン同様に過去の物語をたどるのにそれは必死。
そんな観る側の緊張感に集中力の持続を要求してくる映像の緊張感が相まって、
映画は冒頭より前作以上にアクション全開のハイテンションで畳み掛けてくる。

倫理的な問題はともかく、サスペンス映画としては究極だった 『ユナイテッド93』 で、
ドキュメンタリー作家としての手腕を遺憾なく発揮したポール・グリーングラスの映像は、
登場人物の動きを実際に間近で見ているかのような臨場感を煽りに煽って今回も絶好調。
個人的には、何も人が静かに話している場面まで画面が揺れる必要はないと思うんだけど、
今や世界中のありとあらゆる映像がネット等で臨場感含めてリアルタイムに見られる時代に、
アクション映画や戦争映画におけるこういう映像演出は早、時代が求めるスタンダードといえ、
好悪はともかくこれからのアクション映画はみんなこんなテイストになってゆくんだと思われる。

そして物語の展開自体も「そんなムチャな!?」という超御都合主義の乱射乱撃なんだけど、
しかしこれも早、『24』 で世間に定着したスピードに乗せれば万事オーケー的演出でよしで、
要はTVサイズのスピード感をいかにスクリーン・サイズへと拡大して見せることができるかが、
今後のこのテの映画の鍵ってことなんじゃないだろうか。この監督はそれをよく熟知している。
しかし、その作者の狙い通りコチラも一度、物語に乗ってしまえば二度と途中下車はできず、
まるで自分がカメラクルーのように気づけば必死にジェイソンの一挙手一投足を追っている。

元々ドラマの演出自体は表面的でそれほど深くないし、物語の概略それ自体も、
CIAが自分のケツを拭くために世界中で迷惑をかけまくるというトンデモナイ話なので、
割り切って酸欠必至の刹那的ドライヴ感に身を委ねたらそれでよしと思っていたんだけど、
しかしそう思っていたら冒頭の話を踏まえジェイソンの過去が明るみとなるクライマックスで、
それまで淡白に感じていたドラマ部分に急に艶が出始め「オォ!」という感じの鳥肌マックス。
あの超カッコいいラストのカタルシスこそ娯楽映画の醍醐味じゃないか!

とにかく! 飲み物を渇いた口に運ぶ手が思わず止まり、
オシッコがしたくなってもついつい我慢してしまう、もしくは、
早く席へ戻るため駆け足でトイレをすますこと必定の115分!
ゼッタイにこのまま終わってほしくないこの秋、必見の傑作だ。シビレるぐらいカッコいい……。

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