韓国現代史の闇を題材にした力作、でも… 『光州5・18』

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今もこうして、早く終わってくんないかなぁ、と仕事もソコソコに、
気になる女の子のことでも考えながらボケーッとしている最中にも、
遠くミャンマーじゃサイクロン被害に遭った人々が支援を待って苦しみ、
中国じゃ地震で数え切れないほど多くの人が今も生き埋めになっていて、
この映画のような話はチベットだけじゃなく世界の至るところで起きている。
時にニュースでそれらの話をチラと聞いてなんとも言えない気分になっても、
すぐまた目の前のことに気を取られ、それが別に罪なワケじゃ決してないが、
しかし自分の悩みや不満なんていい気なモンだと自嘲気味に思ってみる。

この映画の題材になっている、“光州事件”が隣の韓国で起きた1980年と言ったら、
ボクは小学2年生。「電子戦隊デンジマン」と「ドラえもん」となによりドリフが大好きで、
休み時間には毎回のように友だちと一緒にフザケて“ひげダンス”を踊ってたハズだし、
折りしも時はまた“漫才ブーム”で、掃除の時間になるたびに箒をマイク代わりにして、
“ザ・ぼんち”の「恋のぼんちシート」をこれまた友だちと歌っていた(81年だったっケ?)。
そんな頃に隣の国じゃ大統領が暗殺されて(’79年)社会が変わりつつあったことだとか、
またある街でなんの罪もない多くの人の命が失われていたことなど当然知らずにいたし、
なにしろその年の冬にジョン・レノンが死んだなんてニュースもまったく記憶していない―。

それをこうして大人になって、好きな映画を通して知るというのはきっと意義のあることだし、
だからなるべく人は(映画に興味があるなら)いろんな国のいろんな映画を観るべきなんだと、
ネタ枯れを隠すことさえできない安易なリメイク映画や、薄っぺらいマンガが原作の邦画など、
ソロソロみんなで三行半を突き付けてやる時期に来ているんだとボクは心から思うんだけど、
しかしこの、本国韓国じゃ歴代興行収入トップ10入りも果たしたというヒット作、『光州5・18』
事件の概要よりボクは勝手に 『実録・連合赤軍』 にも近い硬派な映画を想像してたんだけど、
違った……。かな~り違った。ソロソロ(というよりだいぶ前に)このテのタイプの韓国映画にも、
「わかりますけど飽きてきました」とハッキリ告げるべき時期が来ているのかもしれない……。

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 純朴で心優しいタクシー運転手のミヌ(キム・サンギョン)は、
 高校生の弟ジヌ(イ・ジュンギ)のため家事のすべてを担って、
 彼を名門のソウル大学へと合格させるべく心血を注いでいた。
 ある日、ミヌは秘かな想いを寄せる看護師のシネ(イ・ヨウォン)、
 そしてジヌと3人で映画館へ行きコメディ映画を鑑賞していたが、
 そこに戒厳軍から暴行された1人の市民が飛び込んできて……。

結論は、本作は“光州事件”を現代的に検証するというより事件を題材にしたただの感動巨篇。
冒頭の10分でかなり大味な印象を持つんだけど、そのまま映画は最後の最後まで大味だった。
ただし戒厳軍が市民に暴力を振るい始めるシーンからはさすがの韓国映画的豪快さに執拗さで、
目を背けてしまうほど凄惨なシーンがこれでもかと連続し事件の悲惨さを現代へとよみがえらせる。
やがて、『殺人の追憶』 のキム・サンギョン演じる主人公ミヌの弟が殺され、市民軍が結成されて、
名優アン・ソンギが演じる元軍人という地元の有力者を介した戒厳軍と市民軍の交渉があった後、
戦争アクションさながらにヒロイックかつ悲愴なクライマックスへと物語は突き進んでゆくんだけど、
確かに映画は観応え充分ならば、キャラクターを大切に扱うことで人情ドラマとしての幅を持たせ、
事件の記憶と犠牲になった人々の魂を忘れないようにという志に溢れているとは素直に思えるし、
アン・ソンギをはじめとする演技陣の熱演はおおむね良好で、及第点を超えている1本だとは思う。

だけど、映画というよりTVドラマの延長みたいな奥行きのない演出は、誰にも観やすい代わりに、
事件の内面、つまり、“光州事件とは何だったのか?”という核心までには至ってないように思え、
ボクを含め事件の名称さえ初めて知るようなほとんどの日本人には今一つピンと来ないのも事実。
ヘンに時代を懐かしむような雰囲気やキャラクター描写は“三丁目”みたいだし(観たことないけど)、
事件の背景やその時代が“今”に伝えるものを検証しないというのは題材を考えればモッタイなく、
なによりイヤラしい言い方をすれば、この事件はつまり韓国にとって自国の恥部だと思うんだけど、
その自国の恥部を題材にしてまで、催涙弾のようなドラマ、要はお涙頂戴を創りたいのか、という、
そこには題材云々以前に、時に韓国映画に見られるデリカシーのなささえボクは強く感じてしまい、
感動するというよりはヒステリックな韓国人気質にチョッピリ引いてしまったというのが正直なところ。

自国の歴史事情を題材に泣かせる映画と言えば、『シュリ』 以降韓国映画の十八番なんだけど、
しかしこれは 『シュリ』 や 『JSA』 ほどの質的ラインには全然達していないというのがボクの所見。
題材がまだ記憶に新しく苛酷ゆえに、それを中和せんとドラマをベタにしたという見方もできるけど、
それよりはやはり“打線をつないで点を稼ぐ”というより初めからホームランを狙ったという感じが強く、
確かにハラは膨れたけど、ケッコウ期待していただけに肩透かしを喰らったという気分も大きい……。
まぁ客を泣かせるためなら人をすぐに病気にして殺してしまう日本映画よりは何10倍もマシだけども、
とりあえず観るんだったらせめて事件の概要ぐらい押さえてから観るのが礼儀なんじゃなかろうか?
大人になるとホームランがガンガン飛び出す試合より、地味に稼いだ1点を守る試合が好きになる。
A地点からB地点に行くまでにすぐに恋をしてしまうような映画は好きじゃなくなるって結論かな…?

新宿ガーデンシネマシネカノン有楽町2丁目アミューズCQN(渋谷) にて公開中 ]

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