話の面白さもさることながら、映画の“いい薫り”こそ堪能すべきサスペンス! 『ゴーストライター』



ポランスキーの久々の新作だし、大ヒットしているみたいだし、せっかくなら、混んでいるサービスデーとかじゃなく、
もう少しユッタリ鑑賞できそうな日を選んで行こうと、平日の、それも、人の最も少なさそうなレイトショーに行ったら、
…あれれ? ボクを含めて客はたったの10人だった。『アザー・ガイズ』 を1週間前に観に来た時は満席だったのに。
もうみんな観てしまったの? まぁ前の席にドッカと足を掛けたりしながら、ホントにユッタリ観れてよかったんだけど。
それはともかくこれは評判通り大変面白い映画だった。とくに文句をつけるトコはございません。安心して観れます。
齢80歳を間近に控えて近年いよいよ充実している巨匠ロマン・ポランスキー監督の最新作、『ゴーストライター』 は、
元英国首相の自叙伝執筆を依頼された、あるゴーストライターが、首相への取材をしながら原稿書きを進める内に、
国家を揺るがしかねないある秘密を知ってしまい、そのままズブズブとドロ沼に堕ちてゆくという内容のサスペンス。

で、サスペンスだから、あんまり予備知識を仕入れずに観た方がよいと思うんだけど、何がいいって魅力的なのは、
じっくりと練られた物語のストレートな面白さもさることながら、それをテンポよく見せるポランスキーの“粋”というか、
ほどよく肩の力の抜けた老獪な演出の円熟ぶり。イーストウッドあたりもそうだけど、70年代頃に傑作を何本も撮り、
今“巨匠”と称される監督の映画は本当に安心して観られるというか、コチラのツボをわかっていて心地好いばかり。
本作はそれに応える演技陣も派手さはない分、実力重視でそこがまた好いし、現代劇とはいえ古典名画みたいな、
クラシカルな薫りに充ちていて、それがいろんな映画がある中で本作が堅実に支持を受けている要因なんだと思う。
“007”が元イギリス首相を演じるというのもまた粋な妙味だし、いまだ、アメリカには入れないというポランスキーの、
皮肉な視線も利いている。秋の入り口に、ピッタリの1本。こういうのを、“大人の鑑賞に堪えうる”映画というんだな。

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しかしゴーストって、切ない職業なんでしょうね…。

『ゴーストライター』(2010年・フランス=ドイツ=イギリス/ドルビーDTS/シネマスコープ/カラー/35mm/128分)
【監督】ロマン・ポランスキー( 『水の中のナイフ』 『反撥』 『チャイナタウン』 『戦場のピアニスト』 『オリバー・ツイスト』)
【出演】ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ、ティモシー・ハットン
【配給】日活
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】ヒューマントラストシネマ渋谷1
【鑑賞料金】1,300円(前売券)