活劇の昂奮よりも贅を尽くした映像の極みに陶酔すべき武侠芸術映画! 『黒衣の刺客』



『悲情城市』 『戯夢人生』 といった珠玉の名作で知られる台湾の世界的な映画作家、ホウ・シャオシェン監督が、
『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』 以来8年ぶりに撮った新作ってだけでも映画好きとして観逃せないのに、
その題材が“武侠もの”、早い話が中華圏のアクション時代劇と聞いちゃあ、ますます観逃すワケにはいかない。
というワケで、その侯孝賢監督久々の最新作 『黒衣の刺客』 をこれまた久々の新宿ピカデリーで観たんだけど、
なんと満席! しかもどう届いたのかはわからないが客の年齢層がずいぶん高めでちょっとびっくりしてしまった。
ボクが窓口へ行った時にはすでに残り4席くらいで仕方なく普段はあまり取らない最前列の席を取ったんだけど、
観始めるとなぜだか真ん中の席に誰もおらず途中から移動してなかなか優雅な気分で映画の世界観へと没入。
夜勤明けで絶対に寝ると思っていたらスクリーンから放たれる静謐なオーラに意識はずっと覚醒しっ放しだった。

映画の原作は唐代の中国を舞台にした伝奇小説「聶隱娘(ニエ・インニャン)」で、本作はかつては許嫁だったが、
今は暴君である男(チャン・チェン!)を殺すこととなった女暗殺者(スー・チー!)の運命を綴った物語なんだけど、
確かに粗筋や人物相関図は掴みにくいし活劇的昂奮が得られるタイプのアクションとは少々毛色が違うものの、
その代わり、手抜きのいっさいない計算され尽くした1シーン1シーンの絵の美しさと強さはさすが巨匠の風格で、
それがあるから仮にドラマの脳内整理に戸惑っても画面にグイグイ惹き付けられ神経が緩んでいる暇などない。
チャン・チェン&スー・チーというアジアが誇る2大スターが、その吸引力の中核になっていることは言わずもがな。
ただ、残念なのは日本人キャスト2人の顔が優しすぎて彼らが登場した途端画面の強度が少し落ちてしまうこと。
いっそ妻夫木の役もチェンが一人二役で演じていればドラマ的にも艶が増したんじゃないかと思うと悔やまれる。

画像
“血を見せない”アクションというのも今ドキ新鮮。

『黒衣の刺客』(2015年・台湾=香港=中国=フランス/カラー/スタンダード/ビスタ/108分)
【監督】ホウ・シャオシェン( 『悲情城市』 『戯夢人生』 『百年恋歌』 『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』 )
【出演】スー・チー、チャン・チェン、妻夫木聡、忽那汐里、シュー・ファンイー
【配給】松竹
【5段階評価】★★★★☆
【鑑賞劇場】新宿ピカデリー
【鑑賞料金】1,400円(劇場鑑賞券)